東本昌平のコミック『キリン』。バイク乗りなら必ず読んでいる作品で、その中でも初期の「Point of No Return」は、デカ尻ことポルシェ911との勝負にこだわるバイク乗りを描いた名作中の名作。

スズキの傑作バイクのカタナ(GSX1100S)に乗る主人公「キリン」は38歳。もはや自分は人生の半ばにさしかかり、バイクで公道バトルをやる歳じゃないことは重々承知なくらいなオトナだ。
しかし、911に勝つためなら死んでもいいと思い込めた十代の頃の気分にケリをつけるなら今しかない、ここがPoint of No Returnなのだからと考え、最後の勝負に挑む。
主人公の口癖はキリンは泣かない。
キリンは子供をライオンに食われても泣くこともない、自分が無力なことを泣いてもしょうがないからだ。同じようにバイク乗りは社会的に無力だが、キリンと同じように自分もそういう立場でいることを嘆くこともない。ただ乗り続けるだけだ、という意味だ。
これは今で言えば Let it goと同義だろう。
自分は自分、というのではなく、人がなにを言おうがどうでもいい、気にしない、ということだ。自分はただバイクに乗り続けるだけ。
虚無的でありながら、我が道を行くことにためらいはない。それがキリンは泣かないというフレーズに込められた意志なのだ。

*REVOLVER dino network 投稿 | 編集