【1/100の映画評】国を守るために魂を悪魔に売り渡した男の哀しい伝説『ドラキュラZERO』

吸血鬼を題材にした映画は数多くある。有名な吸血鬼もまた多い。「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のレスタト、「トワイライト」のエドワード、「アンダーワールド」のセリーン、「ブレイド」のブレイド、など、枚挙に事欠かない。しかし、その頂点に君臨する吸血鬼の中の吸血鬼、吸血鬼の王といえば、やはりドラキュラだ。
本作は、ドラキュラの誕生秘話をヒロイックに描いている。
もともとドラキュラは、アイルランドの小説家ブラム・ストーカーが記したホラー小説『ドラキュラ』(1897年)の主人公だ。モデルとされているのは、15世紀のワラキア(現在のルーマニア南部)の領主であったヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ、ヴラド・ドラキュラ)というのが有力な説だが、原作中ではヴラド3世とドラキュラの関連性は一切記載されていないらしい。ヴラド3世の父親はドラクル(竜)というあだ名を持っていたが、その子供という意味で、ヴラド3世はドラキュラ(竜の息子)と名乗っていたという。
だからストーカーは、あくまで名称や起源についてヒントを得た、というのが本当のようだ。実際、これまでドラキュラが登場する映画の中でも、ヴラド3世がドラキュラになった、というエピソードを持ち出すものはなかった。
本作の登場までは・・・。
この『ドラキュラZERO』は、ヴラド3世が、当時の最強国オスマン・トルコの激しい侵略の前に存亡の危機に陥ったワラキア公国と、愛する妻や息子を守るために、魂を魔物に売り渡す。そのことによって、彼は吸血鬼になる、というエピソードを描いている。そこが新しい。それがプロットだ。
ヴラド3世→吸血鬼、というエピソードを映画化
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15世紀のワラキア(現在のルーマニア南部)の領主であったヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ、ヴラド・ドラキュラ)
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愛する者を守るためならなんでもできるか?
愛する人を守るために悪に身を染めるか?
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ドラキュラを演じるルーク・エヴァンズは、長身・美形で、声も実にいい。彼は、実はゲイだそうだ。
最近カミングアウトを厭わない俳優が多いが、あれだけの美男だと鏡を見ているだけで、たいていの女性の美しさには不感症になるのかもしれない。
それはともかく、自ら強大な敵に立ち向かうために悪魔に魂を売り渡す決意をしたヴラド3世は、吸血鬼ドラキュラとして願い通りの超絶な力を得る。しかし、その引き換えに徐々にその心にも魔が侵食しはじめ、自分自身をコントロールできなくなっていく。
怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。(ニーチェ著「ツァラトゥストラかく語りき」)
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すべてをなげうち、身を犠牲にしてでも愛する人たちを守りたい。
動機は純粋だが、その代償は大きい。美しくも悲しいストーリーである。
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映画『ドラキュラZERO』特報
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