SG認証で公道を走ることができるBELL 500-TXJ「オールドBELLはこの前頭部のふくらみが特徴的だと思うんです」と小山さん。素人目にはほとんどわからない程のラインが美しいと、まっさきに指摘するところに、小山さんのこだわりを感じることとなった。500-TXはビンテージバイクファンの間では、もちろん有名なヘルメットなのだが、当時のオリジナルは10〜20万円という高値で取引されており、しかもいまの安全基準を満たしていないため、“観賞用”という名目で販売されており、実際には公道で被ってバイクに乗ることはできない。アクティブが開発した「BELL 500-TXJ」はSG認証を取得した、公道を走れる唯一の500-TXなのだ。オリジナルのBELL 500-TXビンテージヘルメット好きにとって価値ある500-TXの表示小さな帽体を実現するための工夫これを実現するため、小山さんはヘルメットの内部の工夫に苦心したようだ。「120回以上にわたったテストで、結果的にインナーの発砲ライナーを二重にすることで、SGの基準をクリアできました。このマーブル模様のライナーは、オリジナルの500-TXもそうなのですが、2種類の硬度が違う発砲素材を配合することで、強度をコントロールしています。また、ヘルメット自体を小さくするため、内装材もMサイズの場合で2mm厚とかなり薄いものとなっています。イヤーパッドは肌触りを柔らかくするためシープスキンを採用し、ベルトは強度を重視し牛革を使っています。また細かいですが、ベルトのストラップは500-TXと同様に、センターステッチも再現しています」。小山さんのこだわりは細部にまでおよんでいた。オリジナルと同様にマーブル模様の発砲ライナーを採用した500-TXJジェットヘルは被ったときの見た目が大事公道で使用できる500-TXJは企画から商品化まで、実に4年の歳月がかかったという。「好きじゃなかったら途中で挫折してたでしょうね。ボクはフルフェイスも被りますが、やはりジェットが好きなんです。ただ、ジェットヘルには理想のカタチがあるといいますか、被った時に深く被れないと見た目のバランスが悪いと思うんです。その点、500-TXのシルエットは理想的ですので、このカタチにこだわってリリースしたいと強く思っていました」。私もジェットヘル好きなのでこの気持ちはよくわかる。安全のために被るヘルメットとはいえ、顔が露出するジェットヘルは、ファッションアイテムという意味でもっと見た目を重視した方がいい。アクティブ社が開発した500-TXJ(フラットシールドは別売:3,800円 税抜)安全基準のSGマークが誇らしげだ現代のヘルメットにはない小さな帽体がもたらす効果とはアクティブが開発した500-TXJは前述のように、オリジナルの500-TXの帽体を3Dスキャニングして、忠実にそのフォルムを再現している。小山さんがこだわった帽体のコンパクトさを、安全基準ギリギリまで計算されてこのヘルメットはできあがったのだ。現代のハイテクヘルメットしか使ったことのない方には、このシンプル過ぎるヘルメットは物足りないと感じるかもしれない。しかし、いまのヘルメットにはない、500-TXJのような小さな帽体のヘルメットは、被った時の見た目の“小顔効果”はもちろん、ヘルメットのエッジすら視野に入らないため、まるでヘルメットを被っていないかのようなライディングフィールを得られるのだ。暴動という想定外の困難を乗り越えて実現した製品化今回、取材に応じて下さったアクティブの小山さんが開発したBELL 500-TXJには、オールドBELLへの情熱がたっぷり詰まっている。このヘルメットを開発している最中に、日本でも報道されたので覚えている方も多いかと思うが、2014年5月に起きたベトナムの暴動で、ヘルメット工場も襲われたのだった。襲いかかる暴徒に囲まれ、狭い部屋に6時間以上も現地スタッフたちと閉じこもり、命からがら脱出することができたのだという。まるで映画「アルゴ」さながらの脱出劇だ。この暴動で破壊されつくした工場と金型を再建して、その情熱を失うことなくようやくリリースすることができるのは、感慨もひとしおなのではないだろうか。BELL 500-TXJの同梱物。同時にリメイクした520Jバイザーと、当時の広告キャラクタのステッカーも貴重なものだ。BELL 500-TXJはバイクに乗る原点を伝えてくれるBELL 500-TXJは6月から7月上旬には販売が開始される。サイズは3種類の帽体を用意し、それぞれ2サイズずつ合計6サイズで定価22,000円(税別)だ。スモール帽体がXXSとXS、ミドル帽体がSとM、ラージ帽体はLとXLとなる。今回はスモール帽体とミドル帽体のみの販売で、ラージ帽体は現在開発中となる。アクティブのBELL製品は、ユーザーにフィットする製品を提供するため、全国86店舗の代理店のみで販売している。この伝説のヘルメットをぜひ店頭で試してみてほしい。ハイテクなヘルメットでは味わうことのできない、バイクに乗る自由の原点を感じることができるかもしれない。● オートバイカスタムパーツの総合メーカー アクティブ