この被写体は、僕のオフィス兼スタジオに置いてあるものだ(近々撤去予定)。もちろん複製だが、レオナルド・ダ・ヴィンチの素描だ。正確にコピーしてあって、描かれている内容はオリジナルと同じはずだが、IKEAで買えば額縁を入れても3,000円しない。
しかし、逆に言えばこうしてプリントされて物体として製品化されたものは、単価3,000円であったとしてもかけ算で売れるから、1万人が買えば3億円になる。
ところが、この元データをデジタルにして、ネット上に置いてしまえばいくらでもコピーできるから価格は限りなくゼロになる。つまり、デジタルになってしまえば商品としての価値はない。
最近Canonの写真専用プリンター PRO-1を導入したこともあって、改めて印刷に凝っているだが、ポートレイトを撮影したあとでモニターで写真をいくら見せても、結局印刷して手に取ってみられる写真にしてあげたほうが、被写体になってくれた人たちの笑顔が違う。また、デジタルデータを渡してしまうとそこで被写体と僕の関係も終わるが、データは保持して必要なときに加工したコピーや紙としての写真を渡すようにしておけば、いつまでも関係は続く。ビジネスモデルってそういうものなんじゃないか。