制約条件は、制約理論、もしくは TOC (theory of constraints)と呼ばれる経営管理哲学のコアとなる考え方だ。制約条件を発見し、改善することで経営上のゴールを目指す。
例えば工場の生産能力の向上をゴールとして考えた場合、大別しても材料の搬入から、製品への製造過程、梱包、出荷などの多くのプロセスがある。そのプロセスの中で最も処理能力の弱い部分=ボトルネックを発見する。ボトルネックとなっている工程の能力の限界こそが制約条件なのである。
そして、そのボトルネックによって全体の生産能力が制約されている事実を確認できれば、その制約条件に全体を合わせることでまずバランスを調整することをめざし、さらにその制約条件を改善していくことで生産能力を向上するというゴールを達成する。
例えば、梱包能力が一日100個で、その他の工程の限界が1日110個以上だとすると、単純計算で毎日10個分以上の製品が在庫となるうえ、出荷工程のキャパが10 ÷ 110 ≒ 9%ロスすることになる。
TOCの考え方によれば、梱包工程の能力がボトルネックであり、その他の工程のキャパを等しく一日100個に制限する。すると在庫の発生がなくなるので利益率が改善する。
そのうえで今度は梱包能力の向上を図り、まず1日110個の梱包を可能にする。そうすれば他の工程も限界能力まで発揮できるから、在庫もなく生産能力が適正化されていく。
この考え方は、スタートアップのようにシンプルな組織だと、はっきりと適用できる。例えば社長が経理と営業をかねているようであれば、営業が忙しくなればなるほど経営面の時間がとれない。逆に資金調達に忙しければ、営業がおろそかになるだろう。
つまり、スタートアップにおいてはボトルネックは社長自身であることが多く、社長の能力における何らかの限界点や物理的な時間のなさがスタートアップの成長を阻害する制約条件であることが、多分に見受けられるのである。