ライフスタイルの一部としてのオートバイ
テノハ代官山は、カフェやレストラン、雑貨販売などの店舗を集めたオシャレな商業施設。
その中の目玉のサービスの一つ、TENOHA LAB。クリエイターやスタートアップに向けた、ミーティングスペースや作業スペースをレンタルする会員制ライブラリーだ。
そのライブラリーにBMWのカスタムバイクが、クリエイティブの象徴として展示してあった(2015.04.28で終了)。
オートバイがライフスタイルの一つ、あるいは象徴として捉えられることは喜ばしいことだ。
昔はアウトローの象徴、その後はカリスマ美容師やDJの御用達としてビッグスクーターが社会現象になり、現在ではリターンライダーと呼ばれる元気な中高年の遊び道具として捉えられるオートバイが、改めて創造性や新しい文化の発信の象徴と位置づけられるようになるのであれば、嬉しいことこのうえない。
オートバイ文化啓蒙の親善大使?
精巧にカスタムされたBMWは置いてはあったが、特にメインになるというよりも、ラボと外界を仕切るガラス越しに、通行人の興味を引くための、ディスプレイ的な扱いであった。
もちろん、それ自体は悪くない。
僕は取材で訪れたため、一般の客(ラボの会員であっても)近寄れない距離まで入ることができた。
だから、こうして写真も撮っているのだが、汗臭さやオイルの匂いが一切しない二台に、戸惑う自分がいたことを告白しよう。
まるで軍服がランウェイのモデルとデザイナーによって、美しく洗練されてしまうのと同じく、確かに美しく変貌した二台のBMWに魅せられると同時に、粗暴さや禍々しさの片鱗もないことに、戸惑うのだ。
このカスタムBMWが、ある意味ミスユニバースのように、バイクの地位向上の親善大使的な役割を担うバイクであり、走ることを目的にして作られたわけではないからこそ、そういう気分になるのかもしれない。
オートバイは走ってなんぼだ。
世界一の美女をテレビの画面越しに見ることは楽しかろうが、自分の隣で自分にだけ特別な微笑を送ってくれるパートナーの方が、より愛おしく魅惑的だろう。
これだけの美しいバイク達だけに、眺めるだけでなく、大いにまたがり、スロットルを思い切り捻って全開にしてみたい。
いつか親善大使の役目を終え、大事にしてくれる乗り手の元で公道を意気揚々と走るその日が来るのを、僕は強く願う。彼らもそれを望んでいるだろう。
そう思う。