http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/38307/
Ello(https://ello.co/)というソーシャルネットワークサービスをご存知だろうか? 2014年3月に立ち上がったElloは、しばらくの間は鳴かず飛ばずだったが、Facebookが芸名で登録していたゲイのタレントのアカウントを(自動的に)削除したことで炎上し、緊急避難先として注目を浴びることになった。多くのLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人々を意味する頭字語)団体から非難されたことがきっかけで、ゲイ・コミュニティがこぞってElloに鞍替えしたのだ。ちなみにElloの“エロ”という発音は、完全に狙ったものだろう。
Elloは、匿名制(ニックネームのみ)かつ招待制のSNSだ。ここで日本人なら「mixiと同じだ」と思うだろう。mixiはFacebookの影響を過度に受けすぎて、mixiページや実名へのシフトを行なうなど迷走した。ほんとうなら逆張りしておけば、Facebookに対するオルタナティブSNSとしての地位を確立できたし、海外進出の可能性もあったのではないか。
ともあれ、ElloがFacebookに対するカウンターパートとして注目を浴びはじめたのは事実だ。実名――つまりリアルの社会生活をそのまま持ち込むことを強いるFacebookは、もはや多くの人にとって窮屈だ。健全で品行方正なコンテンツが並び、猥雑で悪徳的なコンテンツを載せることがはばかられる。もちろんその健全さがFacebookをビジネスSNSたらしめており、社会生活を送るうえで重要なプラットフォームとなっている。
要するにFacebookは昼間のSNSであり、Elloは夜のSNSといってよい。実際Elloはポルノティックなコンテンツを排除しないと言い切っている。その路線へのフォーカスが、彼らの更なる成長を約束するだろうか?
しかし、僕が思うに、たしかにFacebookが健全なSNSとしているがために、若者やLGBTなど社会的立場とソーシャルメディア上のアイデンティティを隔絶したい人たちの支持を失ったとしても、それでもElloの優勢は長続きしないだろう。
匿名で親しい人たちとのネットワーキングには、すでにSnapChatやWhatsApp、LINEなどのモバイルアプリ群が重要な地位を占めており、それほど大きなスペースは残されていない。また、ビジネス用途でいえば、Elloにはおよそ入り込みづらい。Ello上でビジネスを考えるのは、ポルノ産業や風俗系のような特殊な産業に限られるだろう。
Facebookのオルタナティブサービスというコンセプトは、まちがいなく大きなビジネスチャンスをもっているが、それは昼と夜、実名と匿名、優等生と不良のような相反する二面性の戦いではない。Facebookに対するオルタナティブな領域は、もう少し複雑で多面的なサービス群が分立していくことになるはずだ。