コンテンツを作るということは、人的リソースに頼るということだ。
編集者および記者、言ってみればソフトウェア産業におけるプロデューサーとプログラマーの関係に似た人材を確保する必要がある。
Techcrunchの記事では、印象として、
・最近までVCはコンテンツ制作を基本機能とするメディア企業には投資を控えてきた
・現在ではコンテンツがSNSなどでシェアされて拡散していくので、収益逓増が見込まれるようになったので、VCが投資するようになった
と言っているように見える。
しかし、僕に言わせれば、それだけではなく、2014年から急速に成長を始めたメディア企業たちは、同時にテックベンチャーであり、プラットフォームでもあるからVCは評価している、と思っている。
テクノロジープラットフォームとコンテンツパブリッシングの融合
例えばBuzzFeedは、コンテンツ制作をメインとするパブリッシャーだが、同時に比類ないテッック企業でもある。彼らは制作したコンテンツがFacebookを軸としたソーシャルメディア上で拡散されることが、検索エンジンに変わるトラフィックエンジンであると気づいた。だからソーシャルでシェアされやすいコンテンツを作るための分析ツールを作り、シェアの効率性を最大化している。
また、Mediumは、コンテンツを生成するエディターを極端にシンプルにすると同時に、自由なフォーマットでコンテンツを書かせるのではなく、ある程度決まったフォーマットで生成するように、エディターの機能を制限している。
**それはこのdinoも同じ**だ。dinoも、自由にいろいろな表現力を持つエディターを用意する代わりに、読み手にとって読みやすいコンテンツの表記形式をまず決めて、それだけを書くためのツールとしている。
タイトル・小見出し・本文・リンク・動画・画像・引用など、メディアとして必要な様式は決まっている。だからそれだけを書かせる。余計なことはしない。
つまり、エディターに制約条件をもたせることで、書き手を無意識に訓練させているのだ。
このように、さまざまなテクノロジーを用いることで、パブリッシャーとして良質なコンテンツを作る能力のかさ上げをしているのである。
このような事情が相まって、米国ではメディア企業への投資が盛んになっている、と僕は考えている。
2014年はオンラインメディア・ブームで沸きに沸いた。VC(ベンチャーキャピタル)が競って新興パブリッシャーに出資したこともあって、米国や日本で大いに盛り上がった。Preqinによると、VCがデジタルメディア分野に投入した出資総額は、2014年は世界で少なくとも6億8300万ドルに達したようだ。一昨年の2億7700万ドルに比べ、2倍以上もニュースサイトなどに資金が注入された。
NYタイムズに代表される米国の伝統メディアの多くは、人減らしなどの経費削減で息をつなぐのに精一杯の厳しい状況が続いている。一方,勢いづいてきたデジタル特化の新興メディアは、投資家から多くの資金を調達でき、一段と攻勢をかけてきたのだ。