美しいテキストを書くためのパブリッシングプラットフォームとして

WIREDはどうやらMediumが好きらしい。

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日本ではあまり多く語られることがなく、VCのようなITウォッチャーであっても「知らない」と言われることが多いベンチャー。それがMediumだ。その中でWIREDは、積極的にMediumを取り上げる、数少ないメディアである。

僕は2012年にMediumが登場して以来、彼らのシンプルでエレガントなプロダクトに惹かれて、度々さまざまな媒体への寄稿を通じて、Mediumの可能性を論じてきた。
同時に、自分たちのプロダクトが徐々に彼らに似ていくのを(もしくは彼らのプロダクトが我々に似てくるのを)、不安と喜びが複雑に混ざる感情を止められずにいる。

僕が興したリボルバーは、クローズドベース(Revolver)オープンベース(dino)のメディアを簡単に立ち上げることができるメディアプラットフォーム企業だ。

前者には板野友美さんやMay.Jなど、いまをときめくアーティストのコミュニティがあるし、後者には椎名ひかりさんや田所あずささんなどの若手の芸能人のメディアがある。また、dino上には個人メディアだけでなく、特定のジャンルに絞ったキュレーションメディアが2015年4月末現在で12媒体あり、医療やIT、モーターサイクルなどのフォーカスが効いたコンテンツを毎日生み出している。

これらの様子は、Mediumと実によく似ている。
個人がブログのように書き、プロや企業がオウンドメディアとして書く。洗練されたコンテンツを量産する場としてのパブリッシャーとしての側面と、それらのツールを提供するプラットフォームとしての側面を併せ持つ。
これをプラティシャー(Platform + Publisher)と呼ぶのだが、Mediumも我々も、それ以外の言葉で的確に表現できない存在である。

Mediumとの違い

現在、Medium上では、音楽、テック系、旅行、アートなど、5つのメディアがあるという。
メディアの数では我々の方が上だが(僕は年内に100メディアにしたいと思っている)、月間のユニークユーザー(MAU)は、Mediumが2500万人に対して、我々はまだ55万人(203万PV)なので彼我の差は大きい。

ちなみに、内訳を書くと
・MAU
Revolver 25万人 dino 30万人
・PV
Revolver 140万PV dino 63万PV

となる。
ちなみにMediumではTTRと言って、PVやMAUではなく、コンテンツが読まれたトータル時間、つまり1ヶ月に何時間コンテンツが読まれたかを好んで指標に使っている。
これはある意味正しい。Mediumのようなテキスト重視のメディアでは、オーディエンスの没入度合いがロイヤルティにつながるからだ。
僕たちのメディアでも同じことは言えるが、VCやマスコミにはMAUのほうが理解してもらえるので、今のところ僕たちはMAUとPV、特にMAUをKPIに考えている。

Mediumもdinoも、動画・静止画・リンク・テキストを効率的に書き出すための、シンプルで簡単なエディターを採用している。メディア面も非常によく似ている。

違うのは、Mediumでは、自分のページは作れるが自分のサイトは作れない。dinoは自分のサイトとして、コンテンツをまとめてトップページを自分好みにカスタマイズすることができる点である。

つまりMediumは一つの場だが、我々はdinoにしてもRevolverにしてもユーザーが独自に自分の場を作れる、無数の場の集合体と考えている。しかし、そういう違いがあってもやはり、Mediumと僕たちのプロダクトは似てきている。

とはいえ僕自身は、Mediumの創業者であるエヴァン・ウィリアムズほどはテキスト重視ではない。テキストは大事だが、コンテンツとして、画像や動画とのバランスが必要であると考えているのだ。
Mediumではロングフォームの記事を重要視するが、僕は1分で読めるようなショートフォームもあっていいと思っている。

さまざまなコンテンツが交錯し、ブレンドされるようなプラットフォーム。それを目指しているのだ。

*REVOLVER dino network 投稿 | 編集